健康によいビタミンの本

ハート出版の健康書籍ふるさと文庫の中から、ビタミンに関するものを集めました。

健康維持の補佐役ビタミンB群(B1)

基本的な働き/糖質のエネルギー変換
食事でとった糖質(でんぷん・砂糖など)を体内でエネルギーに変えるときに必要な補酵素が、ビタミンB です。B がないと糖質を分解できず、十分なエネルギーを作ることができません。
特に、エネルギーの半分近くを糖質から得ている我々日本人にとって、B は不可欠なビタミンです。

欠乏症/脚気、ウェルニッケ脳症
B が不足して糖質代謝がとどこおると、疲労物質(乳酸)が貯まって、体がだるい疲れやすいといった症状がでてきます。また、イライラする、落ち着かないなどの神経症状もB 不足が関係すると言う人もいます。
完全に欠乏すると、神経系が障害されて多発性神経炎を引き起こします。多発性神経炎とは、いくつかの神経系に、同時に炎症が起こる病気です。
B 欠乏で末梢神経に異常が起こったのが「脚気」です。一昔前に日本で多発した脚気は、極端に白米(主成分は糖質)に偏った食生活が原因でした。下肢の倦怠感、食欲不振、便秘、心悸亢進などの症状を起こします。近ごろは、スナック類やインスタント食品、甘味飲料の取りすぎによる脚気の発生が報告されています。
一方、欧米に多い「ウェルニッケ脳症」は、B 欠乏で中枢神経に異常が起こる病気です。こちらはアルコール多飲者に多くみられます。

上手な取り方/穀類や豆類に豊富
ビタミンB の栄養所要量は、成人男性で1.1mg、成人女性0.8mgです。ただし、B は、水に溶けやすく熱に弱いため、調理時の損失が大きい点を考慮する必要があります。
また、精製度の高い加工食品ほどビタミンB 含量は少なくなります。例えば、精白米のB 含量は玄米の4分の1以下です。米飯は、糖質が多いのでB の消費量が高いうえに、B 含量も少ないのです。
そのため、加工食品やインスタント食品、甘味飲料ばかりとっている人、外食の多い人などは、B の潜在性欠乏症になりやすいので要注意です。

ビタミンBを含む食品(mg/100g当たり)

《穀類》
そば粉(全層) 0.46
玄米 0.41
ライ麦パン 0.16
精白米 0.08
《種実類》
ひまわり(乾) 1.72
ごま(乾) 0.95
落花生(乾) 0.85
カシューナッツ・いり 0.54
くるみ・いり 0.26
アーモンド(乾) 0.24
《豆類》
きな粉 0.76
えんどう(ゆで) 0.27
大豆(ゆで) 0.22
絹ごし豆腐 0.10
糸ひき納豆 0.07
《藻類》
干しあまのり 1.21
利尻こんぶ 0.80
乾燥わかめ 0.39
水前寺のり 0.36
《魚介類》
たらこ 0.71
ふな 0.55
こい 0.46
すじこ 0.42
うなぎ 0.37
ぶり 0.23
《肉類》
豚ヒレ 0.98
豚もも脂身なし 0.94
すっぽん肉 0.91
焼き豚 0.85
豚ロース脂身なし 0.75
豚かた脂身なし 0.71
かも 0.40
豚レバー 0.34
牛サーロイン脂身なし 0.05
《卵類》
卵黄 0.21
鶏卵(全卵) 0.06
《きのこ類》
乾ししいたけ 0.50
ひらたけ 0.40
まいたけ 0.25
えのきたけ 0.24
《茶》
抹茶 0.60

 

必要不可欠な“潤滑油”ビタミンの栄養的生理作用
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止血と骨の強化に必要なビタミンK

基本的な働き/血液凝固と骨代謝
外傷で出血した際、軽いすり傷程度なら放っておいても自然に出血が止まります。これは体の中に血液を固める成分、すなわち血液凝固因子が多く存在するためです。 ビタミンKは、そうした血液凝固因子の合成に欠かせないビタミンで、たとえば、凝固因子のひとつプロトロンビンの形成に必須です。
またビタミンKは、ビタミンDとともに骨を丈夫に保つうえでも欠かせないビタミンです。骨から見つかったオステオカルシンと呼ばれるたんぱく質は、ビタミンKがないと正常に働かないのです。ビタミンKには植物由来のK と、微生物由来のK がありますが、K活性はほぼ同等です。

欠乏症/乳児の出血症
乳児にみられる「乳児ビタミンK欠乏性出血症」は、ビタミンK欠乏の代表です。頭蓋内などに出血が起こり、嘔吐、ひきつけ、けいれん、意識障害などを引き起こし、死亡する例もある恐ろしい病気です。またKの欠乏は骨を弱める原因にもなります。

上手な取り方/乳児は医師と応相談
アメリカの栄養所要量では、成人男性で55~65.、成人女性で50~55.とされています。体重×1.が目安。   健康な成人では、腸内細菌からも供給されるため、欠乏することはまずありません。ただし、抗生物質を服用中の人や、胆道閉塞、肝臓・小腸に疾患のある人は、欠乏する可能性があります。また特に欠乏の起こりやすい乳児の、ビタミンKの摂取量および摂取方法については、産院の医師の指導に従うことが大切です。 

過剰症/溶血性貧血
ビタミンKの過剰症は、主に、ビタミンK剤の形でとった場合に起こりがちです。皮膚病変や呼吸困難、溶血性貧血、未熟児では重症の黄疸になる例もあります。
成人の許容上限摂取量は30000.(=30mg)です。

ビタミンKを含む食品(mg/100g当たり)

  E
〈油脂類〉
大豆油 210
なたね油 120
〈種実・豆類〉
糸引き納豆 870
ビスタチオ 29
松の実(いり) 27
湯葉 22
豆腐(木綿) 13
〈魚介類〉
あわび 23
さば 5
〈肉類〉
若鶏もも 53
若鶏ハツ 41
若鶏レバー 14
牛もも 6
豚もも 2
〈卵類〉
卵黄 40
卵白 1
〈乳製品類〉
クリームチーズ 12
普通牛乳 2
〈野菜・果実類〉
パセリ 850
しそ 690
モロヘイヤ 640
あしたば 500
かぶ葉 340
おかひじき 310
だいこん(葉) 270
ほうれんそう 270
しゅんぎく 250
こまつな 210
にら 180
ブロッコリー 160
ねぎ(葉ネギ 94
チンゲンサイ 84
キャベツ 78
さやいんげん 60
かぼちゃ 26
蒼ピーマン 20
ねぎ(深ねぎ) 78
トマト 40
にんじん(根) 3
〈果実・きのこ類〉
  殆ど0
〈藻類〉
あまのり(干) 2600
ひじき(干) 320
わかめ(生) 140
こんぶ(干) 110
〈茶・その他〉
抹茶 2900
紅茶 1500
せん茶 1400
せん茶(浸出液) 32

 

必要不可欠な“潤滑油”ビタミンの栄養的生理作用
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老化防止に役立つビタミンE

自然界には八種類ある
ビタミンEの仲間は天然に八種類あり、四種(α、β、γ、δ)のトコフェロール類と四種(α、β、γ、δ)のトコトリエノール類に大別できます。通常の食事でとれるのは、主にトコフェロール類のほうで、その中で最も活性が強いのがαトコフェロールです。

基本的な働き/脂質の酸化を抑える
ビタミンEは、体内でエネルギーを作り出すときに発生する「活性酸素」を消去する働きがあります。
活性酸素とは、非常に反応性の強い酸素で、隙あらばすぐにほかの物質と結合(酸化)してその物質を変性させてしまう、実にやっかいな酸素です。例えば細胞膜中の脂質と結びつくと「過酸化脂質」という有害物質を作り出します。過酸化脂質は、現在、老化を促す最重要因子とされる物質です。これが細胞膜中にたくさんできると、細胞の機能が障害されて、細胞レベルから老化が進むと考えられています。
体の中には、そうした事態に対応する防御機構として、過酸化脂質の生成を防ぐ物質がいくつもそなわっています。その代表がビタミンEです。
ビタミンEは、自らが活性酸素と結びつくことで、脂質の酸化を防ぎます。ビタミンEが、老化防止のビタミンと言われるのはこのためです。

欠乏症/筋肉・神経障害
動物では不妊、人では筋肉の萎縮や神経障害にともなう運動麻痺(筋ジストロフィー、歩行失調、腱反射消失、位置感覚障害など)、色素沈着、貧血などが報告されています。

上手な取り方/色つきの植物油が適切
ビタミンEも種類によって効力が違うので、所要量などはαトコフェロール当量(α‐ )で示すのですが、面倒なので、それをビタミンE所要量などということにします。
ビタミンEの所要量は、成人男性で10mg、成人女性で8mgです。
ビタミンEは、植物油に多く含まれ、動物性油脂にはほとんど含まれていません。
ただし、植物油中には活性酸素と結びつきやすい脂肪酸(不飽和脂肪酸)が多いためビタミンEはどんどん消費されます。また調理時の加熱でもビタミンEは急速に失われるので、できるだけビタミンE含量の多い植物油を選ぶことが大切です。
ビタミンEの多い植物油を見分けるポイントは、まず色。精製度の高い白っぽい油より精製度の低い色のついた油のほうがビタミンEが豊富です。さらに、数種の油を混合したサラダ油よりも、サフラワーならサフラワーだけで作った純粋な油のほうが、ビタミン含量が多くなっています。

過剰症/多量摂取は要注意
ビタミンEは脂溶性ですが、一般に過剰症の心配はないとされています。しかし、これにも限度があります。成人の許容上限摂取量は600mgとなっています。
国連食糧農業機関の報告では、健康な成人で1日当たりαトコフェロール150mg以下を絶対安全用量としています。
近ごろはビタミンEの老化防止の効果が非常に注目されていることから、ビタミンEを多量に含む錠剤や栄養補助食品の需要が増えていますが、取りすぎには十分注意したいものです。

ビタミンEを含む食品(mg/100g当たり)

  E α-トコフェロール
〈穀類〉
小麦胚芽 32.6 26.7
〈植物油〉
ひまわり油 39.2 38.7
綿実油 31.1 28.3
サフラワー油 27.6 27.1
米ぬか油 26.4 25.5
とうもろこし油 24.3 17.1
大豆油 19.5 10.4
マーガリン(ソフトタイプ) 19.1 10.3
調合油 19.0 11.8
なたね油 18.5 15.2
オリーブ油 7.6 7.4
ごま油 4.8 0.4
〈種実類〉
アーモンド・乾 31.2 31.0
松の実・いり 13.5 12.3
ひまわりの種・乾 12.6 21.8
落花生・乾 10.9 11.7
〈魚類〉
あんこう肝 13.8 13.8
すじこ 10.6 10.6
たらこ・生 7.1 10.4
〈茶〉
抹茶 28.0 28.2
〈調味料〉
マヨネーズ(全卵型) 17.7 10.0
マヨネーズ(卵黄型) 13.4 9.5

必要不可欠な“潤滑油”ビタミンの栄養的生理作用
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ビタミンEを多く含有する食品

1日あたりの所要量
1日に取るビタミンEの量は、成人で12~15mg、幼児で5mgがよいでしょう。
またビタミンEは体内に入ると過酸化物を作らない働きをする上に、ビタミンE自らも酸化されて尿や皮脂腺などから体外に排泄されます。
そのためビタミンEは過剰症が起こりにくいので、多めに摂取しても安全です(ビタミンE製剤の所要量については46ページ参照)

ビタミンEを多く含んだ食品
ビタミンEは動物性食品には少なく、植物性食品に多く含まれています。油や脂肪に溶けやすい性質から、とくに植物油に多く含まれています。なかでも小麦胚芽油が最も多く100mg中に216IUも含まれています。次いで、ヒマワリの種油、サフラワー油、ゴマ油などの順になっています。
このほかに小麦胚芽、玄米胚芽、胚芽米、黒パン、緑黄色野菜、アルファルファ(マメ科多年草)、クロレラ、麦緑素などのフォルム食品などにも含まれています。
ところで、同じ胚芽でも、米胚芽より小麦胚芽の方がα-トコフェロールの働きは100倍もあります。ビタミンEを取るためならば、小麦胚芽のほうが効率よく摂取できます。

ビタミンEを取る食生活のポイント
①小麦胚芽をみそ汁や牛乳などに加え常食を心掛ける。
②玄米、胚芽米、同じパンなら黒パン、胚芽パンを食べる。
③緑黄色野菜を積極的に食べ、クロレラ、麦緑素なども取り入れる。


ビタミンEを多く含んだ食品

食品名 含有量
小麦胚芽油 216
ヒマワリの種 90
ヒマワリの種油 88
サフラワー油 72
アーモンド 48
ゴマ油 45
ピーナツ油 34
トウモロコシ 29
小麦胚芽 22
ピーナッツ 18
オリーブ油 18
大豆油 14
ピーナッツ(炒) 13
ピーナッツバター 11
バター 3.6
ホウレン草 3.2
オートミール 3.0
小麦ふすま 3.0
アスパラガス 2.9
2.5
玄米 2.5
ライ麦 2.3
ライ麦黒パン 2.2
ベカン 1.9
クラッカー(ライ麦+小麦) 1.9
全粒小麦パン 1.4
ニンジン 1.0
エンドウ豆 0.99

※含有量は、食品可食部100g当たりの国際単位(IU)
※アメリカの食品分析値による

成人病の温床「過酸化脂質」を抑制する
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肝臓障害にはビタミンB群と併せ取る

お酒の飲み過ぎは肝障害になりやすい
長年にわたる飲酒過多、ウイルスや薬剤など、さまざまな原因によって肝臓障害は起こります。
肝臓障害のなかでもっとも多いのが肝臓に中性脂肪が沈着する「脂肪肝」です。この病気は栄養のバランスが崩れることが一つの原因と考えられ、連日酒量の多い人や肥満、糖尿病の人などに多くみられます。

肝臓障害と過酸化脂質の関係
アルコールは、肝臓中の“アルコール脱水素酵素”と“アセトアルデヒド脱水素酵素”の働きで酢酸となり、さらに二酸化炭素と水に分解されます。
しかし、飲酒後に12時間を経過してしまうと、アルコールは酢酸を経て中性脂肪の形で肝臓に蓄積されます。
一度蓄積された中性脂肪がエネルギーとして肝臓から代謝されるには、さらに12時間以上必要。ところが、連日飲酒し続けると中性脂肪が分解しきれずに蓄積され、脂肪肝になるのです。
また、中性脂肪が蓄積される前には、肝臓の細胞膜に過酸化脂質が増加することもわかっています。さらに、アルコールの飲酒量と肝臓や血清中の過酸化脂質の関係を調べた結果、アルコールをたくさん飲む人ほどその過酸化脂質量も多いという報告があります。
これと同じことが、糖質の取り過ぎなどが原因の肥満の人もみられます。これは、砂糖やデンプン質の食物代謝とアルコールの体内代謝が同じ性質を持っているためです。

酒量を減らすことが肝臓を守る
肝臓障害を起こさないためには、お酒の量を減らすことが肝腎。“百薬の長”といわれるお酒でも、一合から二合が適量です。連日の飲酒は避け休肝日を週二日はとるようにします。
そして、過酸化脂質を作らないために日頃からビタミンEをとることも大切。また、アルコールが分解されるためにはナイアシンというビタミンB群の一種が必要ですから、ビタミンEと合わせて取るようにしましょう。

成人病の温床「過酸化脂質」を抑制する
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脳卒中は麻痺が恐い

脳出血は血圧にも注意
一昔前まで脳卒中は死因の第一位でした。今でも、ガン、心臓病とともに三大成人病の一つです。脳卒中には“脳出血”と“脳梗塞”があり、いずれも動脈硬化に由来する病気です。
脳出血は、脳の小動脈が硬化するため壊死し、そのもろくなった血管が血圧の上昇などで破れるために起こります。動脈硬化がひどいと、ちょっとした血圧の変動だけでも脳出血は起こります。
脳の血管が破裂する卒中発作は、昏睡など重症に陥り、死亡する割合も高まります。発作が軽度な場合でも、出血した脳の部分と反対側の手足に運動麻痺を来します。
脳出血は若い人には少なく、40歳以上の中高齢者に多く、また女性より男性に多く見られます。

脳梗塞脳軟化症)は痴呆につながる
脳梗塞には“脳塞栓”と“脳血栓”があります。
脳塞栓は、心臓の疾患(心臓弁膜症、心筋梗塞など)によって心臓内の血の塊が押し流され、脳の細い動脈に引っ掛かるため起こります。脳血栓は、脳動脈の動脈硬化や動脈の壊死などにより脳動脈に血栓ができるために起こります。いずれも脳出血に比べれば発作は軽く、症状の再発を繰り返しながら悪化していきます。また意識障害も少ないのですが、老人に多くみられるために、痴呆の原因となります。
脳出血、脳梗塞ともに、動脈硬化が大きな原因。そして、過労、暴飲暴食なども間接的要因です。
これらを避けた上で、ビタミンEも欠かさず取ることが最善の予防策といえるでしょう。

成人病の温床「過酸化脂質」を抑制する
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ビタミンEの抗酸化作用

不飽和脂肪酸の働き
細胞は細胞膜によっておおわれていますが、その膜の成分中に、水とも油とも親和性のあるリン脂質というものがあります。
このリン脂質が不飽和脂肪酸というものを取り入れることによって、細胞膜に弾力性を持たせています。人の皮膚などが柔らかいのはこのためですし、植物性食用油が液体なのも不飽和脂肪酸を多く含んでいるからです。
また、不飽和脂肪酸にはコレステロールを減少させる働きもあります。

酸素の逆襲――活性酸素と過酸化脂質
私たちは、体に栄養素を取り入れ、それを酸素によって燃焼させることによりエネルギーを得ています。
しかし、細胞内の酸化反応が起こったときにできる、働きの強い酸素(活性酸素)が大量に発生すると、さきほどの不飽和脂肪酸と結びついて「過酸化脂質」という毒性の強い物質を作ります。
これはいわば“細胞のサビ”といえるもので、正常な細胞を傷つけたり、その働きを弱め、体の成分の働きも低下させてしまいます。この過酸化脂質は老化や動脈硬化、糖尿病といった成人病、ガンなどの原因になります。

 

酸素の逆襲と戦うビタミンE
こうした活性酸素と戦うのがビタミンE。不飽和脂肪酸が酸化されて過酸化脂質になるのを防ぐ“抗酸化作用”の働きがビタミンEにはあるのです。
ただ、すでにできてしまった過酸化脂質を分解し無毒化する働きは残念ながらビタミンEにはありません。
ビタミンEを日頃から意識して取るようにし、できるだけ過酸化脂質の生成を防ぐことが大切です。


主なトコフェロールの生理活性

種類 1mgの効果
(単位:IU)
Dα-トコフェロール 1.49
Dγ-トコフェロール 0.2
Dδ-トコフェロール 0.016
Dlα-トコフェロール 1.1

 

成人病の温床「過酸化脂質」を抑制する
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ビタミンEの生理活性

8種類あるビタミンE
ビタミンEの化学名はトコフェロールであることは前述しましたが、じつはこのトコフェロールという物質は一つだけではありません。
天然のトコフェロールには、化学的性質が共通していて化学構造の違うトコフェロールの仲間(同族体)が8種類あることがわかっています。
大きくはトコフェロールとトコトリエノールに分かれ、さらに化学構造の違いごとにそれぞれα~δに分かれます。そして、それぞれ生理活性(人の身体の中での働き)に違いがあります。
ですから、一概にビタミンEを多く含んだ食品であるといっても、どのトコフェロールを多く含んでいるのかによってその生理活性に違いがでてきます。

各種トコフェロールと生理活性
8種類あるトコフェロールの中でも、生理活性がもっとも強いのはα-トコフェロールです。
ビタミンEを含んだ普通の食品の中にはα、γ、δ-トコフェロールの3つが含まれていますが、この3つで生理活性を比較してみても、α型を1とすると、γ型はその十分の一、δ型は百分の一くらいになります。
またビタミンEの生理活性の目安として、国際単位(IU)が用いられていますが、α型の場合1mgは1.49IUとなり、生理活性が一番大きいのです。

成人病の温床「過酸化脂質」を抑制する
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ビタミンCの減少を抑える保存法と調理法

野菜は放送して保存する
ビタミンCを豊富に含んだ野菜を買ってきても、そのまま置いておくだけではビタミンCは減少してしまいます。
これはビタミンCが酸素と結合(酸化)し、その効力がなくなるためです。ビタミンCは、ビタミン中でもっとも酸化しやすい性質をもっています。
たとえば、春菊を夏の日に無包装で保存した時、ビタミンCがどれくらい減少するか調べた『商品科学研究所』の実験結果によると、一日だけでじつに62%も減少するとの例も出ています。
ですから、野菜を保存するときはラップなどで包装し、さらに冷蔵するようにしてください。
葉菜野菜は冷蔵、根菜野菜は冷暗所に保存などとよくいわれますが、それは根菜野菜は冷蔵しなくても葉菜野菜ほどビタミンCの減少率が激しくないというだけで、決して冷蔵しなくてもよいというわけではありません。
野菜の類は買い置きせず、新鮮なものを小まめに買い求めるべきでしょう。


調理で変わるビタミンCの減少量
ビタミンCは水溶性ですから水に溶け出しやすく、熱によっても壊れやすいビタミンです。ビタミンCを多く含む野菜などは、その調理方法によって減少量に差が出てきます。
たとえば、ほうれん草を例にとると、炒めたときでは、ビタミンCは15%減少(残量85%)します。ゆでたときでは、実験データによりかなりのばらつきがあるものの30~65%減少(残存量70~35%)します。
また、ビタミンCは酸化しやすいと述べましたが、調理したものをすぐに食べず、テーブルに置いたままにしておくとさらにビタミンCは減少してしまいます。

減少量を抑えた調理法
できるだけビタミンCの減少を抑えて料理する方法を紹介します。
ゆでるときも、炒めるときも短時間で一気に加熱することがポイントです。

〈炒めるとき〉
熱容量の大きな鍋に油をひいて煙がでるまで熱してから野菜(水洗いしたもの)を入れます。ザッという音とともに水蒸気があがるはずです。これは野菜表面の水分と油が一瞬にして入れ替わり、表面に油の膜ができ、中の水分を逃がさない効果があります。
ゆっくりと加熱したのでは、油膜のできるのが遅くなるほかに、酵素の作用で野菜の組織が軟らかくなり、水分がビタミンCもろとも出てしまいます。

〈ゆでるとき〉
熱湯に塩を入れてから野菜を入れます。これを炒めるときと同様、酵素を働かせないようにするためです。
手軽に、しかし短時間でゆでるには、電子レンジを使う方法があります。ラップに包んで加熱すれば、ビタミンCの減少量も少なく、うま味を損なうこともありません。
ゆでたものを水で冷やすときは、やはり短時間で行なうようにします。


ビタミンCの損失分は量で補う
生野菜ならビタミンCの減少量もほとんどなく、無駄なく摂取できますが、生のままではカサがでて、ゆでたり、炒めたりした量の半分も食べられません。結果的にビタミンCの摂取量は少なくなります。ですから淡色野菜のサラダより、加熱調理した緑黄色野菜をたくさん食べるほうがビタミンCを多く取れます。

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こんな人はビタミンCをもっと取ろう

[たばこを吸う人]
俗に“タバコ1本で5分寿命が縮まる”ともいわれ、喫煙者は非喫煙者より年間7割も死亡率が高く、WHO(世界保健機関)の調査では肺ガンの85%、心臓発作の25%前後はタバコが原因とでています。

タバコ1本につきビタミンCを25mg消耗させるといわれています。1日のビタミンC所要量が50mgですから、1日1箱吸っている人は、単純計算しても所要量の数倍ものビタミンCが必要になります。
愛煙家に“禁煙することが健康に一番よい”といっても聞く耳持たないでしょうから、せめてこの数字を参考にしてビタミンCをたっぷり取るようにしてくださ
い。

[ストレスの多い人]
私たちの体には、ホメオスターシス(恒常性)といって、生理的性質を一定の均衡状態に保とうとする自律機能があります。ストレスとは一時的にこの均衡状態を崩すことをいいます。
ストレスは個人の身体や心理状態、自然や社会環境の変化などが原因になります。また、ストレスを感じる対象にも個人差が生じます。
ストレスを感じるとビタミンCが消費されることは前述しました。日ごろからストレスを受けやすい人は、ビタミンCを多めに欠かすことなく取ることをお勧めします。


[スポーツ選手]
健康作りに運動は欠かせませんが、必要以上に肉体を激しく使う運動は体にとってのストレスになります。運動の前後には水分と同様ビタミンCもたくさん取ってください。スポーツドリンクにはビタミンCも入っています。


[妊娠中や授乳中の女性]
妊婦は妊娠前に比べ、血中のビタミンCの量が減少し、妊娠後期になればなるほどさらに減少します。
これは、妊婦が母体にとってストレスになっていることとと、胎児の赤血球を作るために多量の鉄分が必要で、この鉄分を吸収するのにビタミンCが使われるためです。
また授乳により、ビタミンC濃度の高い母乳を胎児に与えるために、母親はたくさんのビタミンCを取り入れなければなりません。


[その他、こんな人にも]
次のような人も多めにビタミンCを必要とします。
アルコール飲酒量の多い人、経口避妊薬(ビル)やアスピリンをよく飲む人、火傷や骨折の知慮うを受けている人、肉体を激しく使った労働をする人などです。

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ビタミンCのガン予防に世界中が期待

生存期間が三倍に!?
ビタミンCとガンの関係がもっとも注目を集めたのは、アメリカのノーベル賞受賞者ポーリング博士の『ビタミンCとガン』という本によってでした。
なにしろ末期ガンの患者に1日10gのビタミンCを投与し続けたら、90%の患者の生存期間が平均で3倍。残り10%の患者は20倍に延びたというのです。
さらに、痛みが減り、体調もよく食欲も出てきたというのですから、ガンに苦しむ患者はもちろん、ガンの恐怖に生きる現代人は「ビタミンC=ガンが治る」と早計に思ってしまいました。
ところが、博士の報告は、ガンの研究・治療で有名なアメリカのメイヨクリニックで否定的に受け取られたり、反対の臨床実験結果も出されてきました。しかし、悪性細胞の増殖を抑制するインターフェロンの体内合成にビタミンCが深く働くことは確かめられています。


ビタミンCはガンに有能か
ビタミンCは前述した以下のような作用でガンの発生を防ぐらしいことが分かっています。
※ニトロソアミンという発ガン性物質の生成を抑える。
※発ガン性に関与する過酸化脂質や活性酸素(野獣酸素)といったフリーラジカルの発生を抑える(抗酸化作用)。
※白血球やリンパ球の機能を高め、体の免疫能力を増強することで、ウィルス性のガンを防ぐことが可能。

ただ、これはガン発生の一部分を抑えられるに過ぎません。そして、残念ながらビタミンCでガンが完治したという報告はありません。

しかし、一部にしろガンの発生を防ぐことはできますので、日ごろから欠かさずビタミンCを取り、予防につとめるに越したことはありません。
さらに、ガンを防ぐ効果のあるビタミンとしてビタミンEとカロチン(ビタミンAの前駆体)があります。ガンの予防には、これらも合わせて取るようにしてください。
世界中でガンに対する研究は盛んで色々な解明の手掛かりを見つけ、新しい薬や治療法が考案されています。しかし、いまだ決定打は出ず、人類からガンが消えてなくなるまでにはさらに長い時間と英知、努力が必要なようです。

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糖尿病の合併症を防ぐ

インシュリンの分泌を盛んにする
糖尿病にはインシュリン依存型(若年型糖尿病)と、インシュリン非依存型(成人型糖尿病)の二つがあります。
後者のインシュリン非依存型は中年以降に多く見られるもので、過食や肥満といった栄養のアンバランス、ストレス、運動不足などが主な原因となって血糖値が上がったり、膵臓から分泌されるインシュリンの働きを妨げたりすることによって起こります。
ビタミンCは、膵臓にあるランゲルハンス島からのインシュリン分泌を盛んにする働きをしています。それによって、インシュリン不足からくる高血糖を防止して、正常な体内代謝の維持につとめるのです。
前者のインシュリン依存型は二十代前の人に発症するもので、インシュリンの分泌が機能しなくなって急激に血糖値が上昇し、糖尿病や尿量が増加します。しかし、いまだにその原因はよくわかりません。
この場合、体内で糖が利用されないために、替わって脂肪がエネルギー源となってしまいます。したがって高血糖はもちろん高血圧、高脂血症、動脈硬化、脳血管障害、心筋梗塞、神経障害、網膜症などを併発します。

重症になると糖尿病昏睡(血糖値が異常に高くなって脳を冒し、昏睡状態になること)など非常に危険な状態に陥ります。
ビタミンCには、白血球の食菌作用、抗体生成の促進といった免疫能力の増強作用があることから、糖尿病性毛肝障害、高脂肪血症、糖尿病性感染症などの予防に期待がもたれています。

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飲酒の前後にビタミンC補給

増加するアルコール肝硬変
肝機能障害は、B型肝炎・C型肝炎に代表されるウィルスや、長期にわたる飲酒過多、劇薬の副作用など、さまざまな原因で起こります。
なかでも多いのが、飲酒方と糖質摂取過多などによって、肝臓に中性脂肪が沈着する“脂肪肝”という肝機能障害です。
さらに飲酒過多を続ければ、脂肪肝からアルコール肝硬変への障害が悪化します。近年日本でもアルコール摂取量の増加にともなってこの病気が増えてきています。


アルコール分解を助けるビタミンC
アルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素とアセトアルデヒド脱水素酵素の作用により酢酸となり、さらに二酸化炭素と水に分解されます。
しかし、これもアルコールを飲んで12時間くらいまでがピークで、それを経過すると、アルコールは酢酸から中性脂肪の形で肝臓に蓄積されます。こうして一度蓄積された中性脂肪が消失するためには、さらに12時間ほど必要です。ところが、それを経ぬうちに(つまり24時間以内に)飲酒してしまうと、さらに中性脂肪が蓄積され脂肪肝になってしまいます。
ビタミンCはアセトアルデヒド脱水素酵素を活性化させる働きがあるので、飲酒前や飲酒後はもちろん飲食中にも野菜や果物を食べたりしてビタミンCを十分に取っておくようにしてください。ちなみにアルコールの分解にはビタミンB群も欠かせないビタミンです。
また、肝臓に中性脂肪が蓄積される前に、肝臓の細胞膜に過酸化脂質が増加することがわかっています。
肝臓や血清中の過酸化脂質と飲酒量の関係を調べた結果、アルコール摂取量が多い人ほど過酸化脂質の量も多いという報告があります。細胞膜内で過酸化脂質を抑えるのはビタミンEの役目ですが、ビタミンCはその働きを強める作用をします。

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