ガンの発生・増殖を抑制する
血管新生をより阻害するδ―T3
ガン細胞は栄養や酸素を得て大きくなるために、新しい血管をつくり出します。ガンの化学療法の一つである抗血管新生療法とは、いわば〝兵糧攻め〟のようなもので、新しい血管の形成を阻害して栄養や酸素の供給を阻止し、ガン細胞の成長を抑えるという方法です。
この療法に利用できる強力な血管新生阻害剤として、大きく注目されている物質が、実はT3なのです。なかでもδ―T3がいちばん効力を発揮することが分かっています。
血管新生の過程では、血管の内皮細胞の増殖や移動、管形成などが見られます。2.5~5μMの濃度のδ―T3は、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖、移動、管形成を完全に阻害、さらにマトリゲルプラグ法(血管新生関与成分を添加したマトリゲルという物質をマウスの皮下に注射)によるマウスの試験においても、δ―T3(投与量30μg)は血管新生を阻害したという研究報告があります。
また、これらの一連の試験では、α―TPに血管新生阻害作用は見られませんでした。
発生や増殖を抑える
T3には、ガンの発生や増殖を抑制する作用もあります。
Wadaらは、ガンを自然発症しやすい遺伝子を持つC3H/He雄マウスを、コントロール群(17匹)とT3混合物投与群(14匹)とに分け、40週間後に肝臓における1匹当たりの腫瘍数を比較しました。コントロール群には、T3を含まない飲料水、T3混合物投与群には、T3混合物(αを22、γを38、δを12%含む)の濃度が0.05%の飲料水を与えました。
その結果、コントロール群の7.6±6.9個に対し、T3混合物投与群では1.4±1.0個と発ガンが抑制されました。肝臓だけでなく、肺でも同様の結果が見られました。
またWadaらは、ヒト肝細胞ガン株HepG2を用い、T3の類似体間で抗増殖作用の比較をしています。いずれのT3も抗増殖作用を有するが、δ―T3が最も強力に増殖を抑制するとの結果でした。
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中性脂肪・コレステロールを減らす
動脈硬化を引き起こす高脂血症
高脂血症は、中高年世代に多く見られる疾患の一つです。血中の中性脂肪(トリグリセリド)値、コレステロール(LDLコレステロール)値が正常値より高い状態にあります。偏った食生活を中心とする、日常の生活習慣が、この疾患のリスクを高める要因といえます。
高脂血症が恐ろしいのは、動脈の血管壁にLDLコレステロールが蓄積し、血管が硬く脆くなったり、詰まりやすくなったりする動脈硬化の原因となるからです。動脈硬化それ自体は自覚症状がないので放っておくと、遂には血管が詰まったり破裂したりして、日本人の死因の上位を占める脳卒中や心筋梗塞を引き起こす事態にもなりかねません。
また、高脂血症の人には肥満タイプが少なくないため、高血糖や高血圧の心配も出てきます。これらが重なると、いわゆる「メタボ」となってしまいます。
過剰な脂質を低減
デスメチルT3は、このような過剰な脂質を減少させます。
Qureshiらは、LDL受容体欠損(高コレステロール血症)マウスに、デスメチルT3(γとδ―T3)を一日当たり1mg(50mg/kg体重/日)、1ヶ月間投与しました。
その結果、LDLコレステロール値が28%低下、トリグリセリド値が19%低下し、しかもHDLコレステロール(善玉コレステロール)値は無変化であること、また同用量を投与したα―TPには低下作用が見られないことを確認しました。
アメリカのブリストル・マイヤーズスクイブ社での臨床試験では、1日当たり100mgを経口投与したところ、LDLコレステロール値が20~25%減少、トリグリセリド値が15~20%減少しました。
そして、こうした減少効果に必要な摂取量は1日当たり75~100mgであると報告しています。
高脂血症患者20名を対象とした別のプラセボ(偽薬)対照試験でも、1日当たり120mgの経口投与により、トリグリセリド値が28%低下したという結果が得られています。
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酸化的障害を低減する
諸病を誘発する酸化的障害
フリーラジカルや活性酸素による酸化的障害は、皮膚や脳の老化・疾患だけでなく、ガン、心筋梗塞、糖尿病、動脈硬化、白内障やその他、実に多くの病気を誘発します。
フリーラジカルや活性酸素の発生原因は、体内でのエネルギー産生、紫外線や放射線、タバコ、排気ガス、ストレスなどさまざまです。
もちろん、体内にはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やグルタチオンのような抗酸化物質が存在しますが、加齢などにより合成能が衰え、不足気味になってしまいます。そこで、体外からの抗酸化物質の補給が必要となってくるのです。
δ―T3が最も高活性
公的機関では近年、抗酸化力の指標として、SOD活性に代わり、酸素ラジカル吸収能(ORAC)が採用されてきています。ORAC値とは、活性酸素消去能を数値化したものです。
Meullerらは、ビタミンEの8種類の類似体すべてのORAC値を比較検討してみました。
その結果、α―TPとα―T3のトリアセチル体(α体)は、どちらも最も低い1.02と1.95を示したのに対して、δ―TPとδ―T3のモノメチル体(δ体)は、それぞれ約3倍高い2.98と5.65でした。
最も高いORAC値を示したのはδ―T3であり、酸化的障害の低減に、δ―T3が極めて有効な物質であることが確認されました。
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歳とともに弱まる抗酸化力
人間の寿命は100歳以上?
人間の寿命は、果たしてどれくらいなのでしょうか。
研究者の中には100年以上との説を唱える人もいますが、実際には疾病や老化などにより、100歳を迎えることなく、ほとんどの人が死を迎えてしまうというのが現実です。
遺伝的なものや疾病はともかくとして、老化という現象が、食生活を含めた生活環境、社会環境と密接に結びついていることは否めません。
年々衰える細胞組織
人間を含めて生物の細胞は、一定の周期で分裂・増殖を繰り返しています。しかし、無制限に細胞分裂を続けるわけではありません。
歳をとるにしたがい、わずかずつ分裂・増殖のサイクルは長くかつ遅くなっていきます。
すなわち、徐々にではありますが、細胞のリニューアルがきかなくなってしまうということです。
こうして、老化現象というものが進行していくことになるわけですが、では老化はどうして起こるのでしょうか。
老化の要因の一つは活性酸素
体内の細胞分裂の衰え、つまり老化の原因については、現在のところ、明確な結論は出ていません。しかし、活性酸素が一つの要因ではないかと考えられているのは事実です。
第2章で述べたように、体にさまざまな害をもたらす活性酸素は、SODをはじめとするスカベンジャーの働きで抑えられています。
ところが、40歳を過ぎる頃から、体内のSODは急激に減少します。
この年代になると、体力の衰えを自覚したり、生活習慣病にかかる人が増えるのは、このためではないかと考えられているのです。
脳の酸素消費量は体の5分の1
また、体だけではなく脳の働きも、老化にともなって衰えていくわけですが、たとえば、アルツハイマー症なども、活性酸素による脂質過酸化反応がもたらすとされています。
そもそも脳の酸素消費量は体全体の5分の1にも及び、それに比例して活性酸素も大量に発生します。
このため、歳をとって体の機能が衰え、スカベンジャーの生成能力が落ちると、ボケが始まるのです。
老化防止の切り札
こうした体や脳の老化のスピードを遅らせるためには、健全な食生活が何より大事です。しかし現代では、それだけでは十分とはいえず、栄養補助食品などに頼らざるを得ないのが現実です。
その中でも、とくにビタミンEは「老化防止のためのビタミン」といわれ、広く使用されてきました。
トコトリエノールは、そうしたビタミンEの作用を保持しつつ、さらに強力な抗酸化力を持っています。
それだけに、老化防止のための切り札として、ますます期待が高まっていくものと思われます。
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血管硬化や血小板の凝集を防ぐ
動脈硬化を予防する
トコトリエノールには強力な抗酸化作用があるため、先に述べたようなストレス性の病気には大きな効果を発揮します。
たとえば、その代表ともいえる動脈硬化に対しても、十分な予防効果が期待できるのです。
そもそも動脈硬化とは、血液中の成分(コレステロールや血小板など)が動脈の壁に蓄積したりして、動脈が硬くなったり、血管腔が細くなったりした状態のことをいいます。
これが進むと、血行が悪くなって慢性疾患を招くほか、血管が詰まって、心筋梗塞や脳卒中のような恐ろしい病気を誘発することにもなります。
動脈壁に蓄積されるコレステロール
通常、動脈硬化は年齢を重ねるごとに徐々に進行しますが、過度なストレスがかかると急速に進んでしまいます。ストレスが体内に活性酸素を大量に発生させ、血液中のコレステロール(LDLコレステロール)が次々と酸化されて動脈壁に溜っていくからです。
また、一方で、ストレスがかかると、血液中のコレステロールの量も増えていきます。体に蓄えられていたコレステロールが、ストレスと闘うエネルギー源として血液中に放出されるためです。
ところが、血液中に動員されたコレステロールは、そのまま消費されずに血液中に残ることも多く、そのため活性酸素に攻撃される頻度が増して、動脈壁に溜りやすくなるのです。
さらに、活性酸素が動脈壁を直撃すれば、動脈壁が傷ついてもろくなったり、その傷口には血小板が凝集して動脈を硬く細くしていくことになります。
こうした繰り返しが心臓や脳の大事な血管を硬化させたり、血栓を詰まらせたりして、突然死や過労死を誘発するのです。
トコトリエノール特有の作用
トコトリエノールは、このような動脈硬化の危険因子をことごとく抑える方向に働きます。
すなわち、強力な抗酸化作用で、コレステロールの酸化や動脈壁の障害を防ぐと同時に、過度の血小板の凝集を抑えたり、血液中のコレステロールの上昇を抑える働きをするのです。
ちなみに、血小板の凝集抑制やコレステロール低下作用は、従来のビタミンEにはない、トコトリエノール特有の作用です。
しかも、コレステロール低下作用に関しては、動脈壁に蓄積しやすい悪玉のLDLコレステロールのみを選択的に減らし、その悪玉の排除に働く善玉のHDLコレステロールには、トコトリエノールは何ら影響のないことがわかっています。
動脈硬化の予防だけでなく改善も
また、トコトリエノールの効果は、動脈硬化の進行を抑えるだけにとどまりません。米国ケネスLジョーダン研究グループの Tomeo らの研究においては、トコトリエノールの投与で、動脈硬化が改善する例も報告されています。
25名の血管狭窄をともなう動脈硬化症の患者さんに、18カ月以上にわたってトコトリエノールの高濃縮物を与えたところ、7人に明らかな動脈硬化の改善が認められたということです。
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ストレスがもたらす病気
体にもダメージをおよぼす
先に活性酸素は万病の元、と述べましたが、この活性酸素を大量に発生させるものがあります。それがストレスです。
一般にストレスというと、心理面のみに話が及びがちですが、実はフィジカルの面においても、多大な悪影響を与えているのです。私たちが気づかないだけで、いつの間にかストレス性の病気に冒されているというケースも少なくないのです。
たとえば病名を挙げれば、高脂血症や動脈硬化、高血圧、ガン、慢性関節リウマチなど、数えあげたらきりがありません。まさに、現代人に多い病気が勢揃いといった具合です。
肉体面からもストレスにアプローチ
こうしたストレス性の病気に対して、あえて肉体面からアプローチをし、揺るぎない健康を確立する――これもストレスに克つ有効な手段となります。
なぜなら、病気を予防・改善できれば、ストレスの怖さは半減するし、体調が良好なら、それは必ず心理面にもフィードバックするからです。
すなわち、体を健康にすることが、結果的に「心の癒し」にもつながることになるわけです。
もちろん、ストレスが病気を引き起こすしくみは複雑で、それを肉体面から解決するのは容易ではありません。
しかし、実はストレス性の病気が起こる背景には、ある共通したキーワードが存在しているのです。それが「活性酸素」というわけです。
活性酸素発生のしくみ
では、ストレスがかかるとなぜ活性酸素が大量に発生するのか、そのしくみについて見てみましょう。
ストレスがかかると、まず血液の流れが悪くなります。この状態が続けば、全身の組織が酸欠状態となって生命に関わるため、いったん収縮した血管は、体の持つホメオスタシス(恒常性の維持)機能で間もなく拡張し、血流が再開されることになります。
実は、この血流の再開時に、大量の活性酸素が発生するのです。こうして生じた活性酸素は、たとえば胃粘膜表面では粘膜細胞に損傷を与え、炎症・潰瘍を発生させ、また、血管壁ではLDLコレステロールを酸化し、蓄積するために、高コレステロール症や高脂血症といった症状を引き起こすことになるのです。
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注目を浴びる抗酸化物質
活性酸素とSOD
万病の元となる活性酸素が、私たちの体の中で絶え間なく作られているということは、大変恐ろしいことです。
しかし、一方では、人間の体には、活性酸素の害から守るために、活性酸素除去物質(スカベンジャー)というものが備わっています。
その代表格がスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という酵素です。これはスーパーオキサイド( O )を消去して、活性酸素の発生を抑える役割を果たしています。
SODは体の中で作られますが、年々、歳を取るごとに、その生成能力は衰えていきます。
代表的な抗酸化物質
活性酸素を除去するSODの量が年々減っていくのであれば、同様に抗酸化作用を持つ成分を取り入れる必要があります。
このような抗酸化物質としては、ベーターカロチン、ビタミンC、ビタミンE、カタラーゼ、グルタチオン、カロチノイド、フラボノイドなどのビタミン類があります。中でも、ベーターカロチン、ビタミンC、ビタミンEの三つは、活性酸素を封じる強力な抗酸化物質としてとくに注目を浴びており、活性酸素を大量に発生させる現代社会にとって不可欠な存在でもあります。
ビタミンEの豊富な食品
ベータカロチンは緑黄色野菜に多く含まれている栄養素です。
ベータカロチンは体内に取り込まれ、必要に応じてビタミンAに変化しますが、ビタミンC同様、活性酸素由来の発ガン性物質の生成を抑える働きを持っています。
また、ビタミンEには、細胞膜が酸化されるのを防ぐ働きがあるため、当然のことながら、これらの食品を積極的に摂ることが必要になります。
しかし、環境汚染問題や食物自体に含まれる栄養素の減少という現状を考えれば、体に十分な量を摂取しているとは必ずしもいえません。
そこで、必要となるのが健康補助食品です。先にアメリカでの健康食品ブームについて触れましたが、いまの私たちの環境を考えれば、それは単なる一過性のブームというものではなく、人びとの真の希求が形となって現われたもの、と見るべきではないでしょうか。
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活性酸素が病気の元
体にとって毒にもなる酸素
トコトリエノールには強力な抗酸化作用があると述べましたが、では、抗酸化作用とはどのようなものなのか、この点について具体的に説明しましょう。
私たち人間はだれでも酸素なしには生きられません。体の中、とくに細胞内は非常に低い酸素濃度で保たれています。ところが、たとえば幼児を酸素濃度の高いところに置いておくと、目に網膜症が起こるなど、酸素中毒にかかってしまうことがあります。
私たちの生命の源であるはずの酸素が、逆に毒となってしまうのです。
抗酸化作用とは
私たちは体に栄養素を取り入れ、それを酸素によって燃焼させることによって、エネルギーを得ています。
しかし、細胞内で酸化反応が起こったときにできる、活発な反応性の強い酸素(活性酸素)が発生すると、不飽和脂肪酸と結びついて「過酸化脂質」という毒性の強い物質を作ります。
これが正常な細胞を傷つけたり、その働きを弱めたりすることになるのです。
こうした活性酸素から体を守るのが、トコトリエノールなどのビタミンEなのです。不飽和脂肪酸が酸化されて過酸化脂質になるのを防ぐ「抗酸化作用」を備えているからです。
細胞膜やDNAを傷つける
酸素にはさまざまな種類があり、それぞれが食物の消化や生体物質の合成といった重要な役割を担っています。
しかし、同じ酸素であっても、活性酸素の場合は、細胞膜やDNAを損傷させたり、あるいは、代謝に不可欠な酵素を傷つけたりするのです。
このため、発ガンの原因も、この活性酸素にあるのではないかと考えられています。さらには、糖尿病、ストレス性の胃潰瘍、十二指腸潰瘍、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、リウマチ、白内障、アトピー性皮膚炎など、あらゆるといっていいほどの病気に、活性酸素が関わっているといわれています。
活性酸素を大量に発生させる要因
こうした活性酸素を大量に発生させる要因は数え切れないほどあります。
なかでも、身近で強力な因子とされるタバコをはじめ、自動車の排気ガス、放射能や超音波、紫外線、制ガン剤、ダイオキシン、アルコール、脂肪を多く含んだ食物など、私たちの身近にたくさん存在しています。
それだけに、活性酸素からいかに身を守るか、このことについては真剣に考える必要があります。
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天然ベータカロチンをとろう
天然ものがいちばん
「ベータカロチンはとりたいけど、緑黄色野菜がニガテで…」
大人にも緑黄色野菜ぎらいの人は意外に多いものです。
てっとり早くベータカロチンをとる方法はあります。市販されているベータカロチン飲料などを利用すれば、手軽に補給できるでしょう。
まだベータカロチン・ブームを実感していないという人は、スーパーマーケットの飲料コーナーをのぞいてみてください。ベータカロチン飲料の新製品がずらりと並んでいます。
しかし、合成カロチンは、吸収率がよくないとか、効力が不安定だとか、あまりかんばしくない評価も一部にあります。
ニンジン100パーセントのジュースを利用する方法もあります。小さめの缶ジュースでニンジン2本分がとれます。飲みやすいように果汁をミックスしたタイプもあります。これらのジュースも、ベータカロチンのブームを受け、種類豊富に出回っています。
このように方法はいろいろとありますが、ベータカロチンに限らず、からだに必要な栄養素というものは、やはり天然の食品からとるのが理想的です。
煮ても炒めても減らない
ビタミンCが熱に弱いことはよく知られています。煮たり、焼いたり、炒めたりすると半減するというので、ナマで食べるサラダの人気が高まりました。
しかし、ベータカロチンは熱に強いのが特色です。ホウレンソウを3分間ゆでると、ビタミンCの残存率は48パーセントまで落ちますが、ベータカロチンはなんと90パーセントも残ります。
また、カロチンは脂溶性なので、油で炒めると吸収されやすいという利点もあります。
加熱調理すると、カサが減ります。すると一度に食べれられる量が増えます。これは栄養学的にみて、たいへんけっこうなことです。
お酒が大好きな人
お酒とベータカロチンの関係
昔の人は言いました。
「酒は百薬の長」
適度に飲む酒は薬以上に健康によい、という意味です。
では、どのくらいの量が「適度」なのでしょうか。一般的には、ビールは小びん1本、日本酒は1合、ウイスキーはシングル1杯程度といわれています。
しかし、自分だけならコントロールできても、接待や付き合いで飲むときはそうもいかないものです。
血液中のカロチン濃度を調べると、お酒の影響がよくわかります。毎日飲む人のカロチン濃度は、飲まない人に比べてぐんと低くなっています。また、飲まなかった人が急に飲みはじめると、カロチン濃度はてきめんに下がります。
ここでも活性酸素が顔を出します。飲み過ぎたアルコールは多量の活性酸素を発生させ、その活性酸素をやっつけるのにベータカロチンが消費されるのです。
飲酒がまねくベータカロチン不足
お酒を飲む人はベータカロチンが不足しがちな傾向があります。飲むときは食べること(とくに野菜類)がおろそかになる人が多いからです。
また、お酒を飲むとタバコの量が増えるという人が多いのも困ったもので、これは最悪のパターンといえます。
ベータカロチンが不足しての飲み過ぎは、確実に健康をそこないます。それを証明しているのは、S字結腸ガンのデータです。お酒の影響を強く受けて発病しますが、緑黄色野菜を毎日食べているだけで、危険率が大幅にダウンします。
「酒は百毒の長」
こんな言葉もあります。まずは飲み過ぎに注意することですが、適量オーバーしそうなときは、緑黄色野菜料理をしっかり食べるよう心がけたいものです。
禁煙できない人
死を早めるタバコ
「百害あって一利なし」
これはタバコのためにあるような言葉です。タバコの害は並べるとキリがありません。
タバコを毎日吸っている人は、タバコを吸わない人に比べると、ほとんどの病気で死亡率が高くなっています。つまり、喫煙習慣は確実に死を早めるのです。
「わかっちゃいるけど、やめられない」
と、禁煙できない人は言います。もしかすると、タバコの害をいちばん実感しているのは、愛煙家かも知れません。
「タバコの実害よりもストレスが恐い」
居直ってしまう人もいます。たしかにストレスも問題です。でも、タバコの害と交換したのでは、何の解決にもなりません。
禁煙できないなら、ベータカロチン
タバコの煙の中には多くの発ガン物質が含まれています。まっさきに頭に浮かぶのは、やっぱり肺ガンです。煙が直接流れ込むのですから、肺に悪影響が出るのは当然のことでしょう。
しかし、タバコが関係しているのは肺ガンだけではありません。喉頭ガンのリスクも大きいですし、肝臓や膀胱などの内臓ガン、胃潰瘍、呼吸器病、心臓病や血管病などの成人病までが、喫煙者のほうに高率で発生しています。
また、タバコは老化を早めるといわれます。女性喫煙者の月経停止は、非喫煙者よりも、数年早いというデータもあります。
ところが、同じ本数のタバコを吸った場合、緑黄色野菜を毎日食べている人は、
ほとんど食べない人に比べて、ほとんどの病気のリスクが低くなるという調査結果があります。
つまり、やめられないタバコの害から、少しでも身を守りたいなら、ベータカロチンを毎日しっかりとれということです。
とくに喫煙者の肺ガンについてのベータカロチン効果は絶大です。緑黄色野菜を1日に半カップ食べていると、肺ガンのリスクは半分になるのです。
また、喫煙本数が多いほど、血液中のカロチン濃度が低くなることもわかっています。
ここで「ベータカロチンが活性酸素をやっつける」を思い出してください。タバコは、あの活性酸素を大量に発生させ、ベータカロチンを消費するのです。
もしも緑黄色野菜をほとんど食べないでタバコを吸っていると? ベータカロチンが不足するため、活性酸素が体内で大暴れします。その結果、ガンをはじめとする病気や老化の危険度がアップすることになります。
そこで結論。禁煙できないなら、まずはベータカロチン補給に努めること。
タバコを吸わない人もベータカロチン
いちばん困るのは、どうしても禁煙してくれない家族や同僚がいる場合です。
そういう環境にいると、自分はタバコを吸わなくても、さまざまなタバコの悪影響(副流煙)を受けることになります。タバコの煙で気分を害されるうえに、健康まで害されてはたまりません。
積極的にべータカロチンをとるように心がけて、自己防衛しましょう。
活性酸素をやっつける
年とともに衰える自己防衛システム
白血球は活性酸素を、体内に侵入した病原体を退治するときの「武器」にしています。活性酸素が役に立つのはこのときだけです。
しかし、必要以上につくられた活性酸素は、逆に白血球を攻撃して痛めつけてしまいます。活性酸素は 〝諸刃の剣〟 。しかも、自分に向いた刃の方が鋭いのです。
もちろん、活性酸素にやられっぱなしというわけではありません。私たちのからだには、活性酸素から身を守る「自己防衛システム」が備わっています。
それはSOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)という酵素で、活性酸素や過酸化脂質がつくられるのを抑制したり、分解したりして、からだに害がないようにしてくれます。
ところが、SODは年をとるとともに、働きが衰えてしまうのです。処理能力をこえる活性酸素が体内で暴れ、からだを痛めつけても、眺めているしかなくなります。
ベータカロチンで活性酸素を撃退
SODの働きが衰えると、活性酸素はさかんに破壊活動を続け、有害な過酸化脂質をつくり出します。これでは老化、成人病、ガンへの近道をたどることになります。
そこで、SODと同じ働きをしてくれる物質を外から取り入れて、助けてもらう必要があります。それが、ベータカロチンです。ベータカロチンは、活性酸素を襲撃して無害化させ、過酸化脂質の生成を防止します。
私たちは、からだの表面のケガはどんなに小さくても気がつきます。しかし、体内の小さなケガには気がつきません。痛いと気がついたときには、病気という大ケガになっています。
できるだけ健康体を長持ちさせるためにはベータカロチンが必要なのです。
ベータカロチンを必要とする世代
中年以降はからだの諸機能が急速に衰えはじめます。どこにも故障はなくても、ピカピカの新車というわけにはいきません。そのときをねらっていたかのように、活性酸素は暴れ出します。
そういった意味で、中年以降から初老にかけて、老化がいちばんスピードアップするときです。ベータカロチンをしっかりと補給して、活性酸素の暴走に歯止めをかける必要があります。
若くて元気でもベータカロチンは必要です。栄養学者は「いまの食生活では若者の将来が心配」という意見で一致しています。
とくに問題視されているのは、肉類の多さと緑黄色野菜の不足です。栄養調査の結果、二十代の若者は緑黄色野菜を必要量の半分もとっていませんでした。
活性酸素は肉類の脂肪が大好物で、すぐさま過酸化脂質をつくり出し、からだを老化させようとします。でも、肉といっしょに緑黄色野菜を食べておけば、ベータカロチンが活性酸素をやっつけてくれます。
ベータカロチンは不老長寿や若返りの妙薬ではありませんが、あらゆる世代にとって必要な、健康を維持させるために働いてくれるお助けマンなのです。
ベータカロチンとカロチンの違い
α・β・γと三種類あるカロチン
「カロチン」といったり、「ベータカロチン」といったり、一般的にはまだ呼び方にバラつきがあるようです。
それでもカロチンに詳しい人は「同じものだ」とわかるでしょうが、普通の人は「別もの? 同じもの?」と迷ってしまいそうです。
じつはカロチンには、アルファ(α)カロチン、ベータ(β)カロチン、ガンマ(γ)カロチンの三種類があります。
このカロチン三兄弟は、これまでひとまとめにされて、カロチンと呼ばれてきました。それぞれの名前で親しまれるほどの存在感がなかったわけです。
ところが、最近になって、三兄弟のうちのベータカロチンばかりが目立っています。アルファカロチンとガンマカロチンの名前がちっとも耳に入ってこないのはどうしてでしょうか。
なぜなら、私たち人間に直接に最も関係があるのは、ベータカロチンだということが知られてきたためです。
私たちが食べてとっているカロチンのほとんどは、ベータカロチンです。そして、私たちの健康に一番深く関わっているのも、ベータカロチンだったのです。
ベータカロチンとカロチンは同じ
もうおわかりいただけたと思いますが、私たちがこれまでずっと「カロチン」と呼んできたものの実体は、ベータカロチンだったわけです。
いまは何かにつけて個性を重要視する時代です。カロチンという名字だけでなく、せっかくベータという名前があるのですから、正式に呼んであげましょう。ベータカロチンにはそれだけの資格があります。
これからベータカロチンの働きについて紹介していきますが、読みおわった頃には、ベータカロチンに「さん」をつけて呼びたくなるかも知れません 。
全身の組織の強化にビタミンC
基本的な働き/鉄分吸収促進
ビタミンC(アスコルビン酸)は、コラーゲンと呼ばれる線維状のたんぱく質を作るときに不可欠のビタミンです。コラーゲンとは、細胞の間を埋めている「結合組織」の主成分で、体内のたんぱく質の3分の1を占めています。このコラーゲン合成を高めるビタミンCの働きは、血管や骨、軟骨、筋肉、皮膚などを丈夫に保つのに欠かせないものです。
またビタミンCは、鉄の吸収を促す働きもあります。鉄は赤血球の中で酸素を運ぶ役目をしているたんぱく質(ヘモグロビン)の構成成分ですが、不足しやすい栄養素で、食事情がこれほど豊かな日本でも、特に若い女性では鉄欠乏の人が意外に多くみられます。
鉄欠乏を防ぐためには、鉄の補給とともに、ビタミンCの働きも必要です。食品中の鉄は、動物の肉やレバー、赤身の魚に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品や卵などに含まれる「非ヘム鉄」とに分類できますが、非ヘム鉄は、体内に吸収されにくく、ほかの成分の吸収阻害を受けやすいことで知られています。ビタミンCは、この非ヘム鉄の吸収を高める作用があるのです。
ビタミンCが体内に十分あれば、鉄の吸収が2~4倍に上昇し、鉄欠乏性貧血の予防と改善に役立ちます。
欠乏症/壊血病、骨形成不全
ビタミンCが欠乏すると「壊血病」が発生します。壊血病は毛細血管がもろくなって歯ぐきから出血する病気ですが、これはビタミンCの欠乏でコラーゲン合成が低下するためです。
また、幼児のビタミンC欠乏としては、助骨がふくれて数珠状になる「メルロー・バーロー病(バロウ病=イギリスの医師の名前から)」が知られています。コラーゲンは、骨の重量の約20%を占め、骨の主要な構成成分でもあるので、Cが欠乏すると骨の形成不全につながるのです。
上手な取り方/野菜は生よりゆでる
ビタミンCは、人やサルなどの霊長類では体内で合成できないので、食べ物から摂取しなければなりません。ビタミンCの栄養所要量は、成人で100mgとされています。新鮮な野菜(もちろん緑黄色野菜も)や果実は、最高の補給源です。
Cが水に溶けやすく熱に弱い性質をもつことから、加熱調理より生野菜のサラダのほうがCの補給に有効と思われがちです。しかし、調理時の損失分(平均50%程度)を考慮しても、加熱したほうがカサが小さくなって多量にとれるので、むしろ加熱調理のほうがビタミンCをたくさんとれます。
なお、喫煙者では、ビタミンCの消費量が通常以上に多くなっています。禁煙するのが第一ですが、それができないときはビタミンCの豊富な食品を積極的に食べることが大切です。
ビタミンC含む食品(mg/100g当たり)
《いも・種実・豆類》 | |
じゃがいも | 35 |
くり | 33 |
さつまいも | 29 |
ぎんなん | 23 |
《肉類》 | |
牛レバー | 30 |
鶏レバー | 20 |
豚レバー | 20 |
《野菜》 | |
芽キャベツ | 160 |
なばな | 130 |
パセリ | 120 |
ブロッコリー | 120 |
カリフラワー | 81 |
ニガウリ | 76 |
青ピーマン | 76 |
ほうれん草(冬採り) | 60 |
さやえんどう | 60 |
ししとうがらし | 57 |
あしたば | 41 |
こまつな | 39 |
ほうれん草(夏採り) | 20 |
《果物》 | |
アセロラ | 1700 |
グァバ | 220 |
ゆず(果皮) | 150 |
すだち(果皮) | 110 |
レモン(全果) | 100 |
甘がき | 70 |
キウイ | 69 |
いちご | 62 |
グレープフルーツ | 36 |
ライチー | 36 |
温州みかん | 35 |
すいか | 10 |
健康維持の補佐役ビタミンB群(B6)
基本的な働き/アミノ酸代謝に必要
ビタミンB は、主にたんぱく質の構成成分であるアミノ酸を作ったり分解したりする酵素の補酵素として働きます。また、糖質の代謝にも一部関与しています。
B の働きでアミノ酸代謝が活発に保たれていると、皮膚や粘膜が強くなり、感染症の予防などにも役立ちます。
欠乏症/通常は起こらない
ビタミンB は、腸内細菌が合成する分を利用できるので、通常、人間で欠乏症が起こることはあまりありません。過去にアメリカで、ビタミンB を含まない人工栄養を与えた乳児にみられた例があるくらいです。
ちなみにネズミのB 欠乏症状としては、皮膚炎、てんかん様の発作、貧血などが報告されています。
上手な取り方/妊婦は不足しやすい
栄養所要量は、成人男性で1.6mg、成人女性で1.2mgとされています。
ビタミンB は、前述したように人間では不足したり欠乏することがあまりありませんが、抗生物質、経口避妊薬(エストロゲン含有)などの薬剤を服用中や妊娠時には、欠乏する可能性があります。つわりの発生には、B 欠乏が関わっているとも言われています。
アメリカでも穀類の摂取が少なく、ビタミンB を必要とするたんぱく質の摂取が多いため、所要量が示されています。近ごろは日本でも若い人を中心に、アメリカ並みにたんぱく質の摂取が多い食事をとる人が増えているようなので、今後、B 不足が問題になってくるかもしれません。肉類の摂取量が多い人は、意識してB の豊富な食品を食べたいものです。成人の許容上限摂取量は100mgです。
ビタミンB6を含む食品(mg/100g当たり)
《穀・いも類》 | |
こめ(玄米) | 0.45 |
こむぎ(国産) | 0.35 |
さつまいも | 0.28 |
そば(生) | 0.15 |
こめ(精白米) | 0.12 |
《油脂類》 | 殆ど0 |
《種実・豆類》 | |
ごま | 0.60 |
落花生 | 0.46 |
糸引き納豆 | 0.24 |
絹ごし豆腐 | 0.06 |
《魚介類》 | |
かつお | 0.76 |
かたくちいわし | 0.58 |
さば | 0.51 |
さんま | 0.51 |
とらふぐ | 0.45 |
まだい | 0.31 |
《肉類》 | |
かも皮なし | 0.61 |
若鶏むね皮なし | 0.54 |
牛もも脂肪なし | 0.35 |
豚もも脂肪なし | 0.32 |
若鶏もも皮なし | 0.22 |
《卵類》 | |
卵黄 | 0.26 |
《野菜・果実類》 | |
にんにく(りん茎) | 1.50 |
ししとうがらし | 0.39 |
バナナ | 0.38 |
カリフラワー | 0.23 |
青ピーマン | 0.19 |
あしたば | 0.16 |
オクラ | 0.10 |
《藻類》 | |
あまのり | 0.61 |
乾燥わかめ | 0.09 |